研修センター マイ・フレンド

熱海の海を見下ろす高台に建つ研修センター。
敷地は地上のヴォリュームを日影規制によって制限され、地下は堅い岩盤によって掘削を困難にしている。前面は急勾配の全面道路からの斜線制限がかかり、背後には崖下の北側隣地斜線制限と、万一の崖の崩落時の耐力を要求する法的制限がある。北側隣地のソニー保養所の眺望権、日照権を配慮し、建物をできる限り低く抑えた。そしてまた、建物内に外部、半外部的な空間を作り、視覚的、空間的な拡がりやつながりによって、より豊かに感じさせる空間を確保することを目指した。外構は可能な限り、自然の土を残し、内部も各階植栽帯や坪庭、光庭、屋上テラスを設けて数十種類の草花を新たに移植し、建物の内外共に緑化に努めた。南側は、前面道路のサクラ並木に合わせて、サクラを敷地内東西両側に植えた。
以前、敷地の前面道路に接する部分は、検地石積による高い擁壁があり、一部の道路幅員は5m未満の為、両方向の車のすれ違いや、学童の通学路としての日常的な不便さを伴っている状態であった。今回の工事で危険であった擁壁は撤去し、建物及び新設するコンクリートによる擁壁をセットバックさせて設置する一方、前面道路の幅員を市の指導による5m以上を確保し、学童の退避スペースとして敷地の一部を公共の用に供することにした。
傾斜地に建つ建物として、建物自身が擁壁の性能を持つつくりとした。
また、建物は、道往く人々に威圧感を与えないように壁面をできる限り、透けた感じのつくりとした。ファサードは、建築主であるアパレル系会社の商品のもつ繊細さを表現するとともに、化粧パイプ・吊材などで分節化し、相模湾に浮かぶ白い大型帆船をイメージした外観のデザインとした。化粧パイプには上下共に照らすことができる筒状の照明器具をとりつけ、ライトアップを可能にした。そして、西側の部分は、各階タテ8メートル、ヨコ15メートル(120平方メートル)の大スパン構造の空間とし、その中に、2階は研修室、3階は着付指導室兼宿泊室と大浴場、4階は食堂、5階はゲストハウスと、大部屋として使用が必要な諸室を配置した。崖地の構造計画上北側の一スパンは、深礎からの片持ち構造となっている。研修期間中の研修終了後は、伊豆大島や初島をのぞむ抜群の眺望をもつヒノキの半露天風呂に入浴し、レストランで食事の後は「空中庭園」のある、デッキテラスで憩うことができる。研修の場としての機能を充たすほかに、各階に「緑化計画」を施し、エコを目指しての省エネルギー対応、更には女性のみが使用する施設としての「癒し」や「アメニティ」に配慮したつくりとなっている。
【建物名称】 研修センター マイ・フレンド
【所在地】 静岡県熱海市
【竣 工】 1998年
【用 途】 研修施設、ゲストハウス
【敷地面積】 1075.01㎡
【延床面積】 1825.64㎡
【構造・規模】 RC造、地上5階