東大和市立中央図書館(坂倉建築研究所在籍時担当作品)

東大和市は北に村山貯水池のある多摩湖を有し、市域のほぼ30%を湖と周辺の緑地帯が占める東京都としてはめずらしい“緑と湖の住宅都市”である。その中心部にこの図書館は計画された。
この規模の図書館として、市民の利用勝手や管理上から一般開架室と児童開架室およびブラウジングコーナーなどをワンルームとすることを要望された。そして東京郊外に建つ建物として、広い空間を可能な限り自然の光と風を採り入れることを考え、そのための特殊な機械設備を施すことなく、自然の法則を利用して省エネルギーへの寄与を目指す「パッシブソーラー」の考え方に立って設計した。一般開架室中央上部に架け渡された大壁を円形の特殊耐水ボードにスパイラル鋼管を内貼りしたボイド管を一列に打ち込むことによって作られる「ボイドウォール」によって「二重外皮(ダブルスキン)」とし、西陽からの遮光・断熱性能をもたせるとともに、吹抜け部分を利用して室内空気の自然循環経路(熱回収や採熱・排熱など)とすることによって空調計画の一要素となるように考えた。
諸室の特色として、一般開架室は大スパンによる大空間とトップライト、そしてパッシブソーラーの壁。ブラウジングコーナーは波状曲面ガラスと、それに沿って配置されたソファ。児童開架室は、波状曲面ガラスと傾斜棚、そして囲われた本箱。自由に座ったり、寝ころんで本の読める場所としての児童ボックスがある。目の悪い人のための対面朗読室は、あえて天井の高い日の当たる暖かい部屋にした。普段は四角い部屋でカーテンを引くと天井の高い部分とつながり円筒状の部屋になるお話し室や、2階には吹き抜けのあるギャラリーを介して2層の壁面書庫があり、落ち着いた雰囲気で読書や調べ物が出来るレファレンス室等がある。
【建物名称】 東大和市立中央図書館
【所在地】 東京都東大和市
【竣 工】 1983年
【用 途】 図書館
【敷地面積】 23,041.50㎡
【延床面積】 2,689.72㎡
【構造・規模】 RC造、地下1階、地上2階
搭屋1階
【受賞】 ・BCS賞
・SDレビュー入賞
・日本図書館建築賞
・JIA25年賞