リネア【li:nea】

社会情勢の変遷、家族構成、生活のスタイル、住まい方の価値観の変化、収入の多寡等に対して、自分の身の丈にあった住まいを選べ、また、住み替えが自由にできる。それが「賃貸」集合住宅の存在価値であり、買い替えが自由に進まなくなった現在の社会情勢の下での「分譲」集合住宅との大きな違いである。ここでは、そうした賃貸集合住宅の特性を生かし、多様なライフスタイルを営む都市生活者の為の、一定期間「生活」を自ら創造し、楽しむ人のためのテンポラリーな居住空間の提案をしたいと考えた。それは、とりもなおさず、小さいながら住まいの本質である<快適性>や<癒し>を改めて見直し、新たな住まいのアメニティを考えるところから始まった。
入居者は主に、若いカップル・DINKS・自宅で仕事をする単身者やカップル、独身の働く女性等を対象としている。そして、9住戸と小規模ながら、どの住戸もSOHO(SmallOffice Home Office)対応とし、2住戸はメゾネットとした。nLDKといった表現では表されないが、重要な住まいの要素であるBath Roomを住戸の中心に据え、その両脇を吹抜けにすることによって、一方向に伸びる直方体の筒状空間に直角方向と垂直方向の風穴を開け、自然採光、自然通風を可能にした。また、吹抜けに孟宗竹を植えることで、バスタブに張られた水と共に小さいながらも「光と風と水と緑の溢れるサニタリースペース」をつくった。
 ここでは、そのサニタリースペースを<パレット>(palette)と呼び、直方体の二つの単位をつなぐジョイントスリーブのような「入れ籠構造」とした。そして、躯体との間にクリアランスをとることで、天井はバス乾燥機の、床はバス兼トラップや配管の納まりの諸問題の解決を可能にし、壁面のクリアランスはパイプシャフト、住宅情報盤、分電盤、ガス湯沸し器を納めた。
内外装はコンクリート打放しとし、表面は撥水加工を施した。住戸の室内の床はコンクリートの上、メッシュ入りモルタルで仕上げ、含浸性の撥水加工をした。上の敷物は入居者の自由意志に任せた。軸線状の居住空間の両側にある帯状のサイド・アイル(側廊)部分は組立家具の設置スペースであり、その下は木製根太組みの横引きパイプスペースとし、将来のやり替えにも対応可能としている。
【建物名称】 リネア【li:nea】
【所在地】 東京都目黒区
【竣 工】 2001年
【用 途】 共同住宅
【敷地面積】 303.24㎡
【延床面積】 563.34㎡
【構造・規模】 RC造、地下1階・地上3階
【受賞】 ・JIA Architect of the
 Year/現代日本の建築家
 優秀建築選2005
・アルカシア建築賞
 ゴールドメダル
・東京都建築士事務所
 協会建築作品コンクール
 優秀賞
・日本建築学会作品選集
・東京建築賞/優秀賞
・グッドデザイン賞
・日本建築士会連合会賞
 奨励賞
・東京建築士会住宅建築賞
 奨励賞
・日本インテリアプランナーズ協会
 IP賞/理事長賞
・日本インテリアデザイナーズ協会
 JID賞
・SDレビュー朝/朝倉賞